数年前に≪熊野古道≫を歩いた折、
語り部さんに案内して頂いた。
2班に分かれ、
説明を受けながら歩いていたら、
後の方から何やら大きな声が・・・。
何を言っているのか理解できなかった。
暫く聴いていると後組の声と判り、
《六根清浄、お山は晴天》 と言っている。
語り部さんの声にあわせて全員で唱和《六根清浄、お山は晴天》。
この声が気になり説明が理解できなかった記憶がる。
そんな山信仰の頂点に立つのが、山の頂上にある祠だろうか。
その祠に辿り着くまでの山道に色々な名前の付いた岩がある。
先人たちは、名前をつける事で疲れを癒しながら歩いたのであろう。
そんな岩の一つに前穂高岳の「狸岩」がある。
「狸岩」で思い出した事がある。 いささか旧聞ではあるが。
2009年の秋涸沢ヒュッテに泊った折。
出入り口付近に張ってある署名入りの新聞記事(信濃毎日?)に目が留まった。
その記事の内容は、狸いや「狸岩」と「満月」の組み合わせ。
まるで童謡の「證誠寺の狸囃」を連想させる構図に、
一人の新聞記者のユーモア溢れる発想(着想?)に感心した。
≪前略≫・・・・・・高さ約15㍍。
でっぷりしたおなかに耳を立て横向く姿は、
宮崎アニメのトトロにも似、夢をかきたてる。
(5月)9日夜、1200㍉望遠レンズで始めて
満月に浮かぶ狸岩の撮影に成功した。
≪中略≫……涸沢槍直下、
標高2800㍍付近の雪の急斜面で、
雪崩と落石を警戒しながら一人満月が
昇るのをひたすら待った。
午後8時12分、狸岩に満月が
重なるナイトショーが始まる。
何年も撮影に挑戦し、脳裏に描き続けてきた光景が一瞬現れ、体が震えた。
月に合わせ、涸沢カールを斜めに下降しながら撮影。
残雪に埋まる「フカスの岩小屋」付近で足が止まった。 ≪後略≫
遠い昔の記憶のなせる業か、狸岩と命名した先人に乗せられたかは、
定かでないがカメラマンのロマンを感じた。